薬を飲む時間は固定しない方がいい!「ほぼ2年半」の余命が「5年生存率約80%」にまで変化! 時間薬理学と時計遺伝子

生き物の生体リズムを司る時計遺伝子の研究が進むなかで、薬を投与する「時間」に着目した『時間薬理学』というものが今はあるそうです。

時計遺伝子(とけいいでんし、英 clock gene)

概日リズム(体内時計)をつかさどる遺伝子群を指す。動物では period (per), Clock (Clk), cryptochrome (cry) などが知られている。時計遺伝子に変異が起こると、モデル生物では恒常条件下(恒常的な暗黒や連続照明)概日リズムが保てず、活動にリズムがなくなったり(無周期)、短い、あるいは長い周期(短周期、長周期)で行動するようになる。

引用:wikipedia

時間薬理学

地球上に住むほとんどすべての生物は様々な形で周期性を示す。その周期性は、地球が自転・公転することなどの惑星運動によって生み出されたものだとされている。現在までにヒトの生体機能や疾患においても様々な周期性が見出され、そのメカニズムの解明が急速に進められている。なかでも、最も研究が進んでいるのは日内変動、すなわち、約 24 時間周期の概日リズムに関する研究であり、その背景には投薬の時刻を考慮した「時間治療」の発展がある。薬の効き方に関する学問である「薬理学」に時間的要因を組み込んだ「時間薬理学」は、「時間治療」の基礎となり、様々な疾患に対して効果的な治療法を構築する手助けとなる。

概日リズムを駆動する生物時計の中枢は脳内の視床下部にある視交叉上核に存在し、オーケストラの指揮者のごとく全身のリズムを統合している。近年、哺乳類における時計遺伝子が発見されたことを受け、ヒトの時間治療に応用可能な概日リズム機構の分子レベルでの解明が進んできている。最近までに蓄積された研究成果によると、肥満や糖尿病などを含め、リズムの乱れが疾患を導くケースが予想以上に多いことが明らかにされつつある。

引用:waseda.jp

で、この時計遺伝子や時間薬理学についての難しい話はさておき、それらの研究の過程で明らかになった「薬を投与する時間による効果の違い」について、時計遺伝子研究の第一人者・石田直理雄(いしだのりお)さんの話が雑誌に載っていて興味深かったので紹介したいと思います。

石田 直理雄(いしだ・のりお)

昭和30年、米国ミシガン州生まれ。61年京都大学大学院医学研究科生理系博士課程修了。医学博士。同年、微生物工業技術研究所入所。平生2年、米国ラ・ホヤ癌研究所客員。帰国後は、生命研時計遺伝子グループリーダー、東京工大客員教授、筑波大学連携大学院教授、産業技術総合研究所上席研究員などを歴任。28年より国際科学振興財団時間生物学研究所所長。

薬の投与時間によって効果に驚くほどの違いが!

「だいたい2年半でお亡くなりに」→「5年生存率が80%近く」に!

薬の飲み方に関して、大分研究が進んできました。外国で行われた抗がん剤の投与を例に挙げると、ドキソルビシンとシスプラチンという二つの抗がん剤があって、これを一日一回投与すると、だいたい患者さんは二年半でお亡くなりになります。

ところがドキソルビシンを十八時、シスプラチンを朝の六時に投与すると、五年生存率が二十五%まで伸びる。さらにドキソルビシンを朝の六時、シスプラチンを十八時にすると五年生存率が五十%まで上がるんですよ。

(中略)

さらに奇数日はドキソルビシンを十八時、シスプラチンを朝の六時、偶数日はドキソルビシンを朝の六時、シスプラチンを十八時にして投薬を続けると、何と五年生存率が八十%近くに跳ね上がりました。

引用:致知 16年11月号

上記の話を簡潔にまとめると、薬Aと薬Bがあって…

  • AとBを毎日決まった時間に一緒に投与 → だいたい2年半でお亡くなりに
  • Aを18時に、Bを6時に投与(*1) → 5年生存率が25%に!
  • Aを6時に、Bを18時に投与(*2) → 5年生存率が50%に!!
    さらに…
  • *1と*2の組み合わせを偶数日と奇数日で交互に投与 → 5年生存率が80%近くに!!!

とのこと。

なんということでしょう。同じ薬を投与していてここまで効果に差が現れるとなったら、到底無視できない話ではないでしょうか。

薬の投与時間によって効果に差が出る理由

後にシスプラチンの副作用は朝に起きやすく、ドキソルビシンの副作用は夕方に起きやすいことが分かったので、抗がん剤の投与時間によって結果が違ってくることの説明がつきました。

引用:致知 16年11月号

今のところまだ私たちは薬を飲む時間について食前だの食後だのといった「胃の中に食べ物がある・なし」程度のことぐらいしか関係があることを知らないでいる人が大半だと思いますが、時計遺伝子というものの研究から「時間」という概念が人体に大きな影響をもたらしていることが明らかになってきたそうです。

5年生存率が25%と50%では、数字だけで言えば倍の違いです。それぞれの薬の飲む時間を入れ替えただけ、で。これだけを聞くと素人にもできそうな簡単な研究内容ですが、その効果はすごいですね。

同じ薬を毎日違う時間に投与した方が効果が高まる理由

さらに投与時間を毎日入れ替えるのがなぜよいのかというと、慣れという問題がありました。つまり毎日同じ時間に同じ薬を投与すると体の中に分解酵素ができて抵抗するようになる。だから投与時間を固定しないことが一番よい方法だということが分かったのです。

引用:致知 16年11月号

これまたなかなか単純な話ですが、とはいえ単純な話だと思うぐらい「人間にとって当たり前のこと」は、やっぱり人間にとって影響の大きいことだということなんですよね。科学がどんなに進歩したって、当たり前のことを無視して人間の健康を取り戻したり維持したりはやっぱりできないんですよね。

おわり

こういう話や研究はどんどん世の中に知られていってほしいものですが、現実にはなかなかそうもいかないものです。

こうした分野の研究を時間薬理学というのですが、薬ごとにもっときちんとした投与方法を打ち出すことができれば、患者さんの生活の質の向上に繋がるし、医療費の削減にも相当な効果を上げることができるのですが、なかなか浸透していかないですね。

引用:致知 16年11月号

多分、話が単純すぎるんですよね。東洋医学的な考え方と同じで、難しく考えればいくらでも難しい話にもできるけど、簡単に話せば超簡単な話でもあるところが、いまいちその研究を有り難がってもらえなくて、軽く見られてしまうというか。

というかそもそも「時間」とか「生体リズム」という概念を医学に持ち出してる時点でもう既に東洋医学的な感じがしますねそういえば。いかにも製薬会社に嫌われそうな話です(笑)

石田直理雄さんも今は日本で研究をなさっているということですし、ぜひともこういう研究は日本発で頑張ってほしいものです。